直腸脱の診断
直腸脱は、腸が飛び出した様子を専門医が見れば容易に診断できます。
常に脱出しているのでなければ、診察の際にいきんでもらったり、排便動作で脱出を誘発して診断することが一般的です。
脱出時の写真をスマホなどで撮っておいて、受診時に見せればスムースです。
なお、筆者の場合は、高齢などの理由で来院が難しい患者さんには、写真を見せていただくことで診断できますし、様子をうかがえば手術できるかどうか大体わかりますので、ご家族に来院していただいて相談に応じています。
典型的な直腸脱
ひだは同心円状。 このサイトで扱うのはこちらです。
鑑別診断
直腸脱とよく似た病態に、粘膜脱と脱肛(全周のいぼ痔)があります。 それぞれ治療法が異なりますので、鑑別が重要です。 典型的な外観を以下に示します。
粘膜脱
はみ出している感じです。 脱出長は1~2cm程度。
脱肛 (全周のいぼ痔)
ひだはなく、しわは縦方向。 ザクロ状など。
検査
一般的に、直腸脱の診断には、患者の症状や病歴を調べた上で、以下のような検査が行われることがあります。
- 直腸指診
- 肛門から、潤滑剤を塗った手袋をはめた指を挿入して肛門と直腸を診察します。
- 排便造影 (ディフェコグラフィー)
- X線または MRI を使用して、排便時の筋肉の動きを見る画像検査です。
- 肛門直腸内圧測定
- 専用の装置を用いて、肛門括約筋の強さと締まり具合を測定します。
- 注腸検査
- 肛門から造影剤 (バリウムなど) を入れて下部消化管をX線で撮影します。
- 大腸内視鏡検査
- 内視鏡を使用して大腸の内部を観察します。
- 筋電図検査
- 肛門括約筋が正常に機能していない理由が神経損傷であるかどうかを判断します。また、筋肉の協調性も調べます。
- CT
- 直腸、子宮、膀胱およびその他の臓器の位置関係が把握できます。
これらの検査のうち、筆者は、直腸指診・大腸内視鏡検査・CTを全症例に行っています。
大腸内視鏡検査では、直腸脱による粘膜の障害の状態を観察するほか、大腸がんに引きずられて脱出している可能性がないかを調べ、手術の際に固定する腸管に大腸がんなどの病変がないか確認します。
X線での排便造影は、羞恥心の問題と、転倒事故のリスクから、有用性は認めつつも省略していますが、CT で概ね把握可能です。
あらゆる完全直腸脱に対応できる腹腔鏡下直腸吊り上げ固定手術の手技を確立しているため、患者さんの負担も考え、検査は必要最小限度にしています。
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